特集「DXからSX・GXへ」

計測展2022 OSAKAで注目
SX・GXにつながる先進技術に出会う

いまや多くの企業が推進し、事業や働き方の効率化や企業変革に取り組む「DX」。さらにサステナブルな企業価値の向上を目指す「SX」や「GX」の視点を取り入れる企業も出てきています。計測・制御が支える「製造DX」でも企業経営や事業戦略、製品づくりにSX・GXの視点は欠かせません。

連載コラム「DXからSX・GXへ」では、今回の計測展で展示されるものの中から、カーボンニュートラルの実現に寄与し、新しい価値を生み出し、今後のビジネス拡大が期待される技術や製品を日経BPでセレクト、連載形式で紹介していきます。

「もっと製品のことを詳しく知りたい」「技術者、企画担当から話を聞きたい」という方は、ぜひ計測展会場にお越しください。

SX(サステナビリティトランスフォーメーション)=企業が『持続可能性』を重視し、企業の稼ぐ力(競争優位性)とESG(環境・社会・ガバナンス)の両立を図り、経営の在り方や投資家との対話の在り方を変革する取り組み。

GX(グリーントランスフォーメーション)=政府が掲げるカーボンニュートラルの実現に向けて社会システムそのものを変革する取り組み。

Key Product & Key Person 第6回

耐圧防爆形 ミスター省エネ*対応無線通信ユニット オーバル

防爆エリアの温度や流量など「見える化」で持続可能な社会を実現

セイコーインスツル社と協業し、無線ネットワークシステムを展開するオーバル。さまざまな現場での温度や流量を計測する機器などを手掛ける同社の技術が生かしたのが耐圧防爆形の新製品だ。同社でマーケティングを担当する木所大嘉氏にその機能や用途について聞いた。

オーバルが開発した耐圧防爆形ミスター省エネ対応無線通信ユニット

――ミスター省エネとはどのような製品ですか?

ミスター省エネはセイコーインスツル社がおよそ10年前より、省エネ市場で広く展開してきた920MHz総合無線センサーソリューションです。温度・湿度・照度・CO2・電力・電流・パルス・人感・バイタル など様々な現場情報を一元収集できます。シネコンと呼ばれる映画館のおよそ9割でミスター省エネを用いた空調制御システムが導入されています。

非常に拡張性に優れたシステムであり、センサーの増設や通信範囲の拡大、上位システムのグレードアップが可能です。お客様のご要望に応じ、機器選定から上位システム開発・現場構築までオーバルがワンストップで対応いたします。スモールスタートで始められる簡易パッケージも多数ご用意しています。

オーバルとの協業により、2020年に無線流量センサーにも対応しました。これにより、今まであまり導入されていなかった工場などでも採用が進みました。

――オーバルとの協業で工業分野への参入が可能になったわけですね。

子機と親機を無線でつなぎ、さまざまな現場の情報を一元収集・分析して、エネルギー管理(電力やユーティリティ流体の使用量、設備稼働状態や稼働数の最適化など)、状態監視(安全・安心、プロセスの可視化)、保全(設備保全の最適化・予兆保全)など、さまざまな工程で活用できます。ハイスペックな工業用無線は高価なものが多く、見える化などのライトな用途では使いづらい面もあります。

さらに2.4GHzを採用しているため通信距離が短く、通信経路の信頼性を確保するために、規模が大きくなるほど多数の中継器が必要で、大規模な施設では導入コストが高価となってしまうことが考えられます。ミスター省エネのような手軽に導入できるソリューションへの関心は高いと見ています。

――さらに新製品で防爆形を投入されましたね。

オーバルの技術を生かして防爆タイプを開発して、石油・化学工場など防爆が必要な各種工場でも使える仕様にしました。無線のアンテナを筐体の中に組み込んだ耐圧防爆構造にすることで、メーカーを問わず、色々な耐圧防爆機器との結合ができ、汎用性が高くなります。ここはこの製品の強みになります。

製品ラインアップとしては「流量パルス入力ノード」、「アナログ入力ノード」、「温度入力ノード」、「Modbus通信ノード」、「ルータ(中継器)」の5機種をラインアップしています。
これだけのラインアップがあれば、流量信号をはじめ、温度信号や圧力信号などを含め、工場内のほとんどの現場情報を無線で収集することができます。

耐圧防爆形アナログ入力ノードを既設のレベル計に接続してレベル情報を取得する例

――この製品のマーケティング担当として、課題はありますか。

無線システムというと、「設定が面倒」「使いづらいのでは?」といったイメージを持たれている方もいます。導入にあたっては、機器の選定から上位システムの開発、現場構築まで弊社がワンストップで対応します。「お試しで使ってみたい」という方には、無線親機と無線子機、無償の監視アプリがセットになった、簡易パッケージも用意しています。

ミスター省エネを導入することで、エネルギーの使われ方を見える化して、省エネにつなげてもらえるようにソリューションを提案していきたいと思っています。

――今回の計測展では何を期待していますか。

いろいろな産業の方にもブースで実機を見ていただきたいですね。最近では農業分野でも利用が出てきていますので、さまざまな業種で使いみちのある製品だと自負しております。(構成/石井和也)

* ミスター省エネはセイコーインスツル株式会社の登録商標です。

「耐圧防爆形でさまざまな現場での活用を広げたい」

Key Person

木所 大嘉 Kidokoro Hiroyoshi

株式会社オーバル マーケティング部 戦略企画グループ 課長

大学では理工学部で電気工学を学ぶ。1994年オーバル入社。システムエンジニアリング部で流量計を使用した設備、システムの設計・製造業務に携わり、その後、マーケティング部で販売促進戦略に関わる業務を担当。ミスター省エネでは、セイコーインスツル社との提携にもかかわる。

会場に行けばキーマンに会える!

もっと詳しく製品のことを知りたいという方へ。
会期中、木所さんがオーバルの展示ブース(小間No.18)にいます(不在や商談中の場合はご了承ください)。新しい事業開発や共創のチャンス。ご希望の方は、ブースでお声がけください。

Key Product & Key Person 第5回

水電解評価装置 チノー

計測技術で水素サプライチェーン実現へ

温度の計測や制御技術で長年定評のあるチノー。実は燃料電池に関する計測や評価装置でも実績がある。その技術力を生かして力を入れるのが、水素を「つくる」「貯蔵する」「運ぶ」ため必要な関連製品。ラインアップを増強し、持続可能な社会実現に役立つ水素サプライチェーンの構築を目指す。同社で製品マーケティングを担当する木村氏に製品の特長を聞いた。

――水素サプライチェーンの構築でチノーの役割はどんなところにありますか。

電気代の高騰などエネルギー問題が脚光を浴び、再び水素エネルギーへの期待が高まっています。電力・産業・運輸などのさまざま分野で活用することにより低炭素化を進めることができ、いま世界的に水素サプライチェーンの開発が進んでいます。チノーでは水素にかかわる製造、輸送、貯蔵、利用の現場で、評価試験装置、センシング技術などを提供していきます。

――チノーでは水素ビジネスの歴史は長いのですか。

約30年前から燃料電池の評価事業を手がけてきました。社内に脱炭素チームをつくり、水素事業を本格化させたのはここ2~3年のことです。

――燃料電池の評価ノウハウが今回計測展に出品する製品に生きているのですね。

燃料電池は酸素と水素の化学反応で水と電気が発生します。逆に水に電気を加えることで酸素と水素が取り出せます。この水素を作り出す水電解の過程で使う評価装置などを今回の計測展で出品します。水素を効率よく発生させるための諸条件(温度や圧力、流量、電圧・電流計測)はとても重要で、評価装置にも高精度の技術が求められます。ほかにも液体水素の輸送や貯蔵するときの極低温(-253℃)を正確に計測する「液体水素用測温抵抗体」、水素の漏れを検知する「耐圧防爆形水素センサー」などをそろえています。

――競合もありそうですが、チノー製品の強みは何ですか。

耐圧防爆形水素センサーは、配管のなかの水素濃度をリアルタイムで測定できます。何より水素の製造、運搬、貯蔵、利用までトータルでサービスを提供できるのがいちばんの強みです。

――自動車や住宅など燃料電池の普及はこれから。水素社会は来るのでしょうか。

水素供給体制などのインフラ整備が重要です。水素は様々な規制があって、安全に対してワールドワイド共通化が進めば事情も変わってきます。自動車はEVだけでなく、燃料電池車も普及してきます。水素ステーションなど、インフラが整備されれば、短時間で充てんできるメリットなどが生きてきます。またエネファームなど発電、蓄電ができる設備も国の後押しがあれば、燃料電池や水素関連のマーケットも広がっていくはずです。

「水素をつくる、運ぶ、ためる。一貫して計測技術でお応えしたい」

Key Person

木村 尚司 Kimura Naoji

チノー 営業戦略部部長

1986年チノー入社。脱炭素化に向けた製品開発を推進。今回の計測展出展では「BtoCマーケットの方や医療、物流など、これまでお付き合いのなかった業種の方にもアプローチして、ビジネスチャンスを広げたい」と話す。

会場に行けばキーマンに会える!

もっと詳しく製品のことを知りたいという方へ。
27日13~15時、木村さんがチノーの展示ブース(小間No.11)にいます(不在や商談中の場合はご了承ください)。新しい事業開発や共創のチャンス。ご希望の方は、ブースでお声がけください。

Key Product & Key Person 第4回

ABB Ability™ OPTIMAX ABB日本ベーレー

再生可能エネルギーを無駄なくマネージメント

各種プラント向けの自動制御システムなどを手掛けるABB日本ベーレー。独自のEMS(エネルギーマネージメントシステム)で再生可能エネルギーの活用やCO2の削減など、さまざまな目的に合わせた制御システム構築でも実績を上げている。同社でプロダクトマネージメントを担当する坪川氏に製品の特長を聞いた。

――今回の計測展で展示するOPTIMAXとはどんな技術、製品なのでしょう。

「ABB Ability OPTIMAX」は当社が提供するエネルギーマネージメントシステム(EMS)です。脱炭素目標に向けて動いている方や太陽光や蓄電池などのエネルギーリソースを既に所有している方、新規導入を検討している方などに向けた製品です。お客さまの運用目的に従って各種のエネルギーリソースの制御計画を策定し、制御指令を自動で送ります。運用目的の例として、CO2排出量の最小化があります。キーポイントは、再生可能エネルギーをロスなく域内で消費することです。例えば、太陽光発電の余剰電力は蓄電池にためておいて、電力消費が多い時間帯に蓄電池の電気を使う、このような制御を自動で行います。その他の例では、電気料金の最小化があります。具体的には消費電力が高い時間帯に蓄電池のためた電気を使うピークカットで契約電力を削減することができます。

――EMSの分野はSXやGXに取り組むときに非常に重要です。競合も増えていますが、OPTIMAXにはどんな特長や強みがありますか。

OPTIMAXの特長の一つは、複数の運用目的や運用形態に対応できるところです。先ほどお話ししたCO2排出量の最小化と電気料金の最小化を両立する運用。さらには複数の電力市場への参加、市場取引利益最大化―などのマルチパーパスな運用が可能です。

また、OPTIMAXは予測に頼りすぎない制御も特長の一つです。事前に計画立てて制御していくのですが、不測の事態がおきて予測が多少ずれても最後にアジャストできるように補正をかけながら制御指令を出します。AIや機械学習などのコストをかけなくても高い精度でアジャストできるプログラムになっているのも特長です。

――国内で普及させるためには取引先に合わせたコンサルティング力も重要ですね。

このOPTIMAXの柔軟性と国内外50件以上の豊富な導入事例を活かし、脱炭素を目指して再エネ設備導入を考えるお客さまに対し、導入効果の試算や再エネ目標の策定などコンサルティングサービスも行っています。

OPTIMAXが管理可能な、多様なリソース群

――お客様はOPTIMAX導入で何を期待していますか。

国内のクライアントの多くはワンストップでのさまざま対応を求めています。企画や設備など得意分野を持つ企業とコンソーシアムを組むなど、トータルのサービスパッケージも設けてお客様に提供していき、システムの導入から運用まで伴走しながら取り組んでいくことも私たちが直面している課題の一つです。また、ここ1年くらいは問い合わせの内容が変わってきたように思います。これまでは、電力設備を持って運用しているがさらに効率的に使いたいと相談されることが多かったのですが、最近は実用を見越して設備導入をしたエンジニアリング会社や電力会社、商社などを経由した問い合わせが増えています。

――今後、さらなるSX・GXに向けてOPTIMAXを活用していく取り組みはありますか。

ABBには再エネ先進地域である欧州をはじめとした海外の豊富なユースケースがあります。例えば、脱炭素および投資・ランニングコスト削減課題の解決事例として、ABBのドイツにある工場にてCO2排出量ゼロを目指したMission to Zeroというプロジェクトを実施しています。本プロジェクトではOPTIMAXを活用することで、CO2の年間排出量745t削減・電気料金の年間3000万円の削減に成功し、夏の一部期間にて再エネ自給率100%での工場運用を達成しています。また、グリーン水素への転換を行い、エネルギー価値の最大化に取り組んだ先進事例もあります。この取り組みを行ったユーティリティ企業では、OPTIMAXを活用して再生可能エネルギーの発電量と下流の負荷・需要に基づくエネルギーフローを最適に組み上げ、余剰電力をグリーン水素へと変換しました。製造された水素は産業プラントや重工業、水素燃料ステーションといった下流工程での消費に用いられています。再生可能エネルギーの余剰電力をさらに有効活用しつつ、より最適な価格と最適なタイミングでの取引を実現したユースケースです。

Mission to Zeroプロジェクトが行われているABBの工場 (ドイツ)

――脱炭素、水素エネルギーなど、計測展のテーマにぴったりですね。

GX・SXを始めたいと思っている方に「こんなことができるんですよ」と、知っていただきたいです。また、パートナーになるお客さまが見つかるといいですね。計測展では計測したあとのデータをいかに活用して制御していくか、計測のその先の需要の共創にも取り込んでいきたいと思っています。そして、今回の展示会はABB計測・分析機器事業部と合同出展し、幅広い製品を見ていただくことができますので、是非多くの方にご来場いただきたいです。

「いかに再生可能エネルギーを最大限に活用していくか」

Key Person

坪川 絵美 Tsubokawa Emi

ABB日本ベーレー プロダクトマネジメント

EMSのほか、アセットを管理するスマートオペレーティング、セキュリティ製品など多岐にわたる同社プロダクトのマネージメントを行う。「オプティマックスの導入が進んでCO2の排出量減少に役立つことを期待しています」

会場に行けばキーマンに会える!

もっと詳しく製品のことを知りたいという方へ。
会期中、坪川さんがABB日本ベーレーの展示ブース(小間No.3)にいます(不在や商談中の場合はご了承ください)。新しい事業開発や共創のチャンス。ご希望の方は、ブースでお声がけください。

Key Product & Key Person 第3回

【XMAT】 川村インターナショナル

AI活用で使えば使うほどカスタマイズできる機械翻訳

技術翻訳サービスを得意とする川村インターナショナル。機械翻訳エンジンを使った自動翻訳の分野でも独自技術「XMAT」をリリースし、存在感を見せる。計測・制御業界でも活用が増え、海外EC、マニュアル作成、人材教育など、技術×翻訳で取引企業との共創を進める。陣頭指揮を執る森口功造さんに今後の展開を聞いた。

――新サービスはXMAT(トランスマット)と読むのですね。

はい、Xはトランスと読みます。我々が翻訳業界なのでトランスレート(翻訳)と変革を意味するトランスフォーメーションをかけています。

――どんな製品なのですか。

機械翻訳では、まだまだ翻訳を間違えることもありますが、そうしたエラーを人間が効率よく見つけられるように支援機能を実装した新しい機械翻訳サービスです。機械翻訳エンジンを選べるほか、機械学習を行って自社や個人向けにカスタマイズしたり、用語集を設定したりできます。機械学習するときに必要なデータセットもAIを活用して自動で構築できるのは、日本ではXMATだけです(特許取得済み)。

――翻訳操作は難しいですか。

XMATのサイトを立ち上げると、Quick MT、Quick PE、LACなどのメニューが出てきます。Quick MT で分野に合った機械翻訳エンジンを選び、翻訳したい原文ファイル(txt、PDF、JPGなど10以上の書式に対応)をアップロードすると翻訳結果が得られます。あとはQuick PEを使って修正編集や自動検証を行うだけです。機械翻訳エンジンのカスタマイズにはLACを使い、業務に使っている文書やインターネット上の公開情報などをアップロードすると、自動的に教師データとして使える形式に変換されます。それを機械学習させて自分だけの翻訳エンジンができるという仕組みです。

――どんなユーザー層を想定していますか。

もともと当社では、マニュアルを作ったり、情報を発信したりしている専門部署から発注を受けることが多いのですが、ここ数年、機械翻訳のサービスを手掛けるようになってからは、営業やマーケティング、技術、法務、人事と、部門にかかわらず利用者層が広がりました。

ただその人たちは、翻訳、機械翻訳に慣れていない人が多い。機械翻訳には間違いもありますから、それをどうやって使いこなしてもらうかが重要です。そこで発想を変え、翻訳に慣れていない層にフォーカスし、多言語化のときにどんなところで困っているか、効率的に作業するにはどうすればいいのか、など課題を解決していきました。

Quick MTの画面で機械翻訳。翻訳エンジンを選んでいるところ

――競合の多い機械翻訳ですが、XMATの強みはどこにありますか。

自分の業務内容に合わせて翻訳エンジンを選んだり、カスタマイズできたりするのが強みです。IT業界だとグーグル翻訳がよかったり、DeepLなら方言も訳してもらえるので地域ものに強かったり、翻訳エンジンにもそれぞれ特性があります。XMATで最も利用の多いのがみんなの自動翻訳@KIです。日本語から中国語に翻訳するとき、英語を介さないので翻訳精度が上がります。

――業種や職種に合わせてカスタマイズできるといいですね。

それを実現するのが、機械学習とAIの活用です。よりカスタマイズされた精度の高い翻訳作業を行うためには、機械学習に使うデータ基盤が重要です。ところが、多くの方はAIに学習させる十分な教師データを持っていません。そこでデータを集める、データを加工する、データを検証することを自動化するソリューションを用意しました。例えば、これまで業務で使われた英語に対する日本語の正解訳を大量にAIに学習させることで自社あるいは自分だけの翻訳エンジンを持てるようにしました。また最近リリースしたCorpusNowを使うと、インターネット上にある公開データを取り込んで、機械学習用のデータとして使えるようにしました。

――AIや機械学習というと、費用がかかりそうですね。

XMATの基本料金は個人利用で月5500円からで、年払いなら5万円から。機械学習の機能まで入れたプランだと、月9900円から、年支払いなら9万9000円から利用できます。多くのプロセスを自動化してコストダウンしています。

――今後のこの技術の可能性は?

「翻訳を必要とするすべての人に機械翻訳を」をミッションに開発したサービスで、大企業だけではなく個人でも利用することができるのが画期的なポイントです。高額な費用を支払わないと実現できなかったことを、個人でも月額定額料金で利用することができます。個人が使えるようになったことで、フリーランスの翻訳者や、小規模の事業者でも自分だけの機械翻訳エンジンを作ることができるようになり、劇的に生産性を向上させることができます。このことは、翻訳会社や企業内翻訳部門が中核を担っているサプライチェーン構造を個人のレベルからひっくり返してしまうような変革をもたらすことができると信じています。

――計測・制御企業が海外に出るときなどグローバルな課題の解決に御社の翻訳サービスは重要なツールになりそうですね。

むしろ当社の既存のビジネスはそちらのほうです。マニュアルの多言語化のほかにも、動画マニュアルやeラーニング、計測・制御企業向けなら操作画面のUI(ユーザーインターフェイス)の翻訳なども手掛けています。例えば、音声データを自動で機械翻訳してテキストにしたり、字幕にして流したりできます。逆にテキストを翻訳して、音声合成して多言語で語りを入れることもできます。翻訳にほかの技術を組み合わせるといろいろなことができることを、伝えることができていないのが課題です。

――計測展ではどんなところに期待していますか。

「何ができるの?」と言って、ブースに気軽に立ち寄っていただきたい。展示会は製品・サービスについて説明ができるのが一番大きな利点です。計測・制御という専門性の高い分野で、しかもデータを社内外に大量に持っているところが多いので、翻訳×技術で何か新しいことを共創できるのではないかと期待しています。

――計測展の主力テーマの一つである大阪・関西万博も未来社会の共創、新しいアイデアを創造、発信する場所というのがテーマです。翻訳と技術でさまざまな共創が生まれそうですね。

言葉というのは国よってさまざまです。言葉やコミュニケーションの課題を解決するには翻訳会社だけでも、日本人だけでもできません。国内外のいろんなセグメントの人がかかわり、AIや機械学習などを活用しながら壁を乗り越えていかなければなりません。そのとき、会社と会社、会社と人、人とAIなど、共創は大きなテーマですね。(構成/石井 和也)

「コラボレーションするのは人間の才能だと思うんです」

Key Person

森口 功造 Moriguchi Kouzo

株式会社 川村インターナショナル 代表取締役

2003年に入社後、ソフトウェアのローカリゼーション部門の立ち上げや品質管理部門の統括を経て、現在は国際標準規格の策定(ISO)やコトバとデータをつなぐLanguage DXソリューションの開発に携わる。日本翻訳連盟(JTF)専務理事のほか、アジア太平洋機械翻訳協会(AAMT)理事も兼務する。「世界には翻訳の対象になるものは多く、プロの翻訳者によって翻訳されているのは、そのうち数パーセントくらい。人が得意なところ、AIが得意なところを使い分ければもっとすごいことができそう」と話す。

会場に行けばキーマンに会える!

もっと詳しく製品のことを知りたいという方へ
10月28日14~16時に森口さんが川村インターナショナルの展示ブース(小間No.6)にいます(不在や商談中の場合はご了承ください)。新しい事業開発や共創のチャンス。ご希望の方は、ブースでお声がけください。(不在や商談中の場合はご了承ください)

Key Product & Key Person 第2回

【連続ガスモニタリングシステム】 理研計器

メタネーションなど脱炭素化社会実現のキープロダクツに

ガス検知警報器メーカーとして知られる理研計器。さまざまなセンサーを自社開発し、熱量計や分析計など業容は広がる。脱炭素化の新市場にも参入。話題のメタネーションに欠かせない「連続ガスモニタリングシステム」を武器に多分野でのビジネスチャンスをうかがう。同社市場戦略部の寺本考平さんに「脱炭素化」の中身を聞いた。

左から熱量計「OHC-800」、ガス検知警報器「SD-3RI」と汎用コンピュータのPLCで「連続ガスモニタリングシステム」を構成

――理研計器では、脱炭素化にどう取り組んでいるのですか?

弊社が代替燃料を作るとか、工場の燃料を脱炭素化するというわけではありません。私たちの取引先がプラントや工場で脱炭素化を本格的に取り組み始め、社会実装が始まっています。そのサポートすることで脱炭素化に貢献したいと考えています。

――そのキープロダクツが連続ガスモニタリングシステムですね。

最近、メタネーションという言葉がよく使われます。水を電気分解した水素(H2)と、工場の排気ガスなどからきれいに精製した二酸化炭素(CO2)を触媒で合成して、天然ガスの主成分である「メタン」を作り出す技術です。水とCO2を原料にした次世代熱エネルギーで、電力会社やモビリティにもすでに使われていて、脱炭素社会実現の柱の一つとして期待されています。

このメタネーションでは水素とCO2とメタンの3種類のガス濃度を把握するのが大変で、なるべく高い純度のメタンを合成しないとエネルギーとしては使いにくいそうです。弊社の連続ガスモニタリングシステムでは、プラントなどの現場に設置する防爆仕様の熱量計「OHC-800」がベースになっています。ハードはそのままで検量線を引き直し、PLC(汎用コンピュータ)でお客様のニーズに合った答え出すように演算を作りこみ、メタネーションの品質を監視し、品質が悪くならないようにメタネーションの装置を制御するといったシステムをローコストで実現できました。

メタネーション時のガスモニタリングシステムとして活用されている

さらに「OHC-800」にガス検知警報器「SD-3RI」を組み合わせると、3種のガスだけでなく、一酸化炭素(CO)や窒素など様々なガスの組成分析ができます。取引先の要望に合わせて、既存のOHC-800に複数のガス検知警報器を組み合わせて、スピーディーにオーダーメイドのモニタリングシステムが構築できるのもこの製品の強みです。

――メタネーション以外にはどんな場所で活躍しているのですか。

都市ガスの主原料である天然ガスはこのところいろいろな地域から輸入されることが多く、成分がまちまち。この違いがガス熱量の変化をもたらすので、プロパンやブタンなどを加えて、熱量を一定にコントロールしています。熱量を一定に保たないと都市ガスの不完全燃焼を起こしてしまいます。そのための高精度の熱量測にこのシステムが活用されています。

実はその仕事で「雑ガスの影響を受けない熱量計を作ってほしい」という取引先からの要望があったことで生まれました。さらに「熱量計で雑ガスの濃度が測れるのなら、メタンや水素、CO2の割合も分析できるのでは」とリクエストがあって、研究開発の末、連続ガスモニタリングシステムが製品化されました。

――取引先との共創で技術や製品が生まれているようですね。

今回の計測展では、弊社の分析計とコンセプト商品の展示を行います。計測展で、新しいお客様からの新しい要求に出合えることを楽しみにしています。お客様の声をよく聞いて、私たちの技術で何か解決できることはないか、要望に応えてできることはないか、弊社が得意とする現場にマッチしたものづくりでお客様の課題解決に取り組んでいきたいと思っています。(構成/石井 和也)

「計測展ではさまざまな業種のお客様との共創も期待しています」

Key Person

寺本 考平 teramoto kohei

理研計器株式会社 市場戦略部副部長

大学の工学部で材料工学を学び、1998年に理研計器に入社。営業で取引先のニーズに合わせたシステム提案を行う。2019年同社に市場戦略部が新設され、メンバーに。同社の脱炭素関連技術で新市場を切り開く。

会場に行けばキーマンに会える!

もっと詳しく製品のことを知りたいという方へ
10月27日14~17時に寺本さんが理研計器の展示ブース(小間No.32)にいます(不在や商談中の場合はご了承ください)。新しい事業開発や共創のチャンス。ご希望の方は、寺本さんへお声がけください。

Key Product & Key Person 第1回

【無線温度計測システム WC-1000/WT-1000シリーズ】 小野測器

小型化×無線化で温度計測の煩わしさとエネルギーロスを解消

自動車関連の計測解析システムなどを手掛ける小野測器。新規に業界最小クラスの無線温度計測システムを製品化。計測展2022 OSAKAで実機を展示し、様々な分野の機器や空間の温度計測の需要の取り込みを狙う。

――どのような製品ですか?

弊社の中では、これまでになかったコンパクトな計測システムです。熱電対(温度センサー)をつないだ小型でスリムな温度計測モジュールを様々なポイントに置いて、温度データをワイヤレス(Bluetooth)でPCに送信。専用のソフトウエアによってリアルタイムでモニタリングし、データを収集します。

例えば、自動車内の温度の計測では、数十カ所にセンサーを設置するため、配線が煩雑なうえ、ケーブルの山ができてしまいます。ワイヤレスなので配線の手間を省け、狭いところや動いているものにも設置して計測できます。例えばシャフトのような可動部やタイヤのような回転体にも使えます。有線に比べてノイズが少ないのも特徴です。

システム構成

――他社にはなかった製品ですか?

他社でワイヤレスを使った温度センサーはありますが、ここまで小型で、しかも最大200チャンネルまで同時に温度計測ができるものは見当たりません。

もともと小野測器には温度計測のイメージがありません。弊社の得意とする音や振動と同じように温度でも計測や解析を行い、しかも無線化できればという声が内外から出ていました。無線通信技術の基礎研究の部門を中心に製品化を進めましたが、企画側から要望のあった温度範囲やチャンネル数を満足させながら小型化するのはかなり難しいものでした。

また、無線通信の場合、一時的に通信が途絶えたり、データを取りこぼしてしまったりすることはあり得ます。そこで温度計測モジュールにメモリーも搭載し、データを送信しつつ、自らもデータ保存を行い、収録の終了時には欠損のないようにPCのファイルに保存できるのも大きな特徴です。

――実際に製品をリリースして、反応はいかがでしたか?

昨年11月に製品を発表し、本格的な販売はこれからですが、自動車のバッテリーのセルや、産業用のロボットアームの稼働部周辺の発熱などの計測に使われています。また、配線をなくしたい半導体製造装置のような工作機械メーカー、室内の温度分布を計測したい空調機器メーカーなど、これまで取引のなかった分野からの引き合いが出始めています。無線温度計測の市場が広がる可能性を実感しました。

――SXやGXへの取り組みにも役立ちそうですね。

自動車などでもわかりますが、発熱はエネルギーが逃げていく大きな要因です。ロボットアーム、回転体、モーターなどほかのものでも同じ。熱の制御が省エネにつながります。省エネのためには機器の動作の効率を考え、どういうところでエネルギーをロスしているのか、失われているのかを温度計測して解析することが重要になってきています。いままで計測が難しかった部分に無線温度計測システムを使えば、エネルギーロスを減らし、カーボンニュートラルの実現に貢献できる製品ではないかと思っています。

――普及のための課題は?

まずは小野測器の無線温度計測システムというものを認知してもらうことが第一です。弊社の従来の取引先は自動車や工作機器メーカーなど限定的でしたが、計測展で実機を見てもらい、さまざまな分野の方に活用できることを知ってもらいたいと思っています。

いまの計測対象は温度ですが、今後は、様々な仕様にも対応していきたいと思っています。いろいろな所に無線計測のニーズは眠っているので、お客様の反応を見ながら、ラインナップや機能強化を図っていきます。(構成/石井 和也)

「さまざまなジャンルの温度計測に対応できます」

Key Person

山口 輝夫 yamaguchi teruo

株式会社 小野測器 商品統括ブロック MIグループ

明治大学大学院機械工学を専攻。2012年小野測器入社。「自分で考えて仕事を広げていけるのが弊社のいいところ」と山口さん。もともと技術畑のエンジニアだったが、企画やマーケティングも担当し、他社との事業の共創にも積極的だ。

会場に行けばキーマンに会える!

もっと詳しく製品のことを知りたいという方へ
10月27日14~17時に山口さんが小野測器の展示ブース(小間No.23)にいます。新しい事業開発や共創のチャンス。お声がけください。(不在や商談中の場合はご了承ください)