特集「DXからSX・GXへ」

計測展2022 OSAKAで注目
SX・GXにつながる先進技術に出会う

いまや多くの企業が推進し、事業や働き方の効率化や企業変革に取り組む「DX」。さらにサステナブルな企業価値の向上を目指す「SX」や「GX」の視点を取り入れる企業も出てきています。計測・制御が支える「製造DX」でも企業経営や事業戦略、製品づくりにSX・GXの視点は欠かせません。

連載コラム「DXからSX・GXへ」では、今回の計測展で展示されるものの中から、カーボンニュートラルの実現に寄与し、新しい価値を生み出し、今後のビジネス拡大が期待される技術や製品を日経BPでセレクト、連載形式で紹介していきます。

「もっと製品のことを詳しく知りたい」「技術者、企画担当から話を聞きたい」という方は、ぜひ計測展会場にお越しください。

SX(サステナビリティトランスフォーメーション)=企業が『持続可能性』を重視し、企業の稼ぐ力(競争優位性)とESG(環境・社会・ガバナンス)の両立を図り、経営の在り方や投資家との対話の在り方を変革する取り組み。

GX(グリーントランスフォーメーション)=政府が掲げるカーボンニュートラルの実現に向けて社会システムそのものを変革する取り組み。

Key Product & Key Person 第4回

ABB Ability™ OPTIMAX ABB日本ベーレー

再生可能エネルギーを無駄なくマネージメント

各種プラント向けの自動制御システムなどを手掛けるABB日本ベーレー。独自のEMS(エネルギーマネージメントシステム)で再生可能エネルギーの活用やCO2の削減など、さまざまな目的に合わせた制御システム構築でも実績を上げている。同社でプロダクトマネージメントを担当する坪川氏に製品の特長を聞いた。

――今回の計測展で展示するOPTIMAXとはどんな技術、製品なのでしょう。

「ABB Ability OPTIMAX」は当社が提供するエネルギーマネージメントシステム(EMS)です。脱炭素目標に向けて動いている方や太陽光や蓄電池などのエネルギーリソースを既に所有している方、新規導入を検討している方などに向けた製品です。お客さまの運用目的に従って各種のエネルギーリソースの制御計画を策定し、制御指令を自動で送ります。運用目的の例として、CO2排出量の最小化があります。キーポイントは、再生可能エネルギーをロスなく域内で消費することです。例えば、太陽光発電の余剰電力は蓄電池にためておいて、電力消費が多い時間帯に蓄電池の電気を使う、このような制御を自動で行います。その他の例では、電気料金の最小化があります。具体的には消費電力が高い時間帯に蓄電池のためた電気を使うピークカットで契約電力を削減することができます。

――EMSの分野はSXやGXに取り組むときに非常に重要です。競合も増えていますが、OPTIMAXにはどんな特長や強みがありますか。

OPTIMAXの特長の一つは、複数の運用目的や運用形態に対応できるところです。先ほどお話ししたCO2排出量の最小化と電気料金の最小化を両立する運用。さらには複数の電力市場への参加、市場取引利益最大化―などのマルチパーパスな運用が可能です。

また、OPTIMAXは予測に頼りすぎない制御も特長の一つです。事前に計画立てて制御していくのですが、不測の事態がおきて予測が多少ずれても最後にアジャストできるように補正をかけながら制御指令を出します。AIや機械学習などのコストをかけなくても高い精度でアジャストできるプログラムになっているのも特長です。

――国内で普及させるためには取引先に合わせたコンサルティング力も重要ですね。

このOPTIMAXの柔軟性と国内外50件以上の豊富な導入事例を活かし、脱炭素を目指して再エネ設備導入を考えるお客さまに対し、導入効果の試算や再エネ目標の策定などコンサルティングサービスも行っています。

OPTIMAXが管理可能な、多様なリソース群

――お客様はOPTIMAX導入で何を期待していますか。

国内のクライアントの多くはワンストップでのさまざま対応を求めています。企画や設備など得意分野を持つ企業とコンソーシアムを組むなど、トータルのサービスパッケージも設けてお客様に提供していき、システムの導入から運用まで伴走しながら取り組んでいくことも私たちが直面している課題の一つです。また、ここ1年くらいは問い合わせの内容が変わってきたように思います。これまでは、電力設備を持って運用しているがさらに効率的に使いたいと相談されることが多かったのですが、最近は実用を見越して設備導入をしたエンジニアリング会社や電力会社、商社などを経由した問い合わせが増えています。

――今後、さらなるSX・GXに向けてOPTIMAXを活用していく取り組みはありますか。

ABBには再エネ先進地域である欧州をはじめとした海外の豊富なユースケースがあります。例えば、脱炭素および投資・ランニングコスト削減課題の解決事例として、ABBのドイツにある工場にてCO2排出量ゼロを目指したMission to Zeroというプロジェクトを実施しています。本プロジェクトではOPTIMAXを活用することで、CO2の年間排出量745t削減・電気料金の年間3000万円の削減に成功し、夏の一部期間にて再エネ自給率100%での工場運用を達成しています。また、グリーン水素への転換を行い、エネルギー価値の最大化に取り組んだ先進事例もあります。この取り組みを行ったユーティリティ企業では、OPTIMAXを活用して再生可能エネルギーの発電量と下流の負荷・需要に基づくエネルギーフローを最適に組み上げ、余剰電力をグリーン水素へと変換しました。製造された水素は産業プラントや重工業、水素燃料ステーションといった下流工程での消費に用いられています。再生可能エネルギーの余剰電力をさらに有効活用しつつ、より最適な価格と最適なタイミングでの取引を実現したユースケースです。

Mission to Zeroプロジェクトが行われているABBの工場 (ドイツ)

――脱炭素、水素エネルギーなど、計測展のテーマにぴったりですね。

GX・SXを始めたいと思っている方に「こんなことができるんですよ」と、知っていただきたいです。また、パートナーになるお客さまが見つかるといいですね。計測展では計測したあとのデータをいかに活用して制御していくか、計測のその先の需要の共創にも取り込んでいきたいと思っています。そして、今回の展示会はABB計測・分析機器事業部と合同出展し、幅広い製品を見ていただくことができますので、是非多くの方にご来場いただきたいです。

「いかに再生可能エネルギーを最大限に活用していくか」

Key Person

坪川 絵美 Tsubokawa Emi

ABB日本ベーレー プロダクトマネジメント

EMSのほか、アセットを管理するスマートオペレーティング、セキュリティ製品など多岐にわたる同社プロダクトのマネージメントを行う。「オプティマックスの導入が進んでCO2の排出量減少に役立つことを期待しています」

会場に行けばキーマンに会える!

もっと詳しく製品のことを知りたいという方へ。
会期中、坪川さんがABB日本ベーレーの展示ブース(小間No.3)にいます(不在や商談中の場合はご了承ください)。新しい事業開発や共創のチャンス。ご希望の方は、ブースでお声がけください。