特集「DXからSX・GXへ」

計測展2022 OSAKAで注目
SX・GXにつながる先進技術に出会う

いまや多くの企業が推進し、事業や働き方の効率化や企業変革に取り組む「DX」。さらにサステナブルな企業価値の向上を目指す「SX」や「GX」の視点を取り入れる企業も出てきています。計測・制御が支える「製造DX」でも企業経営や事業戦略、製品づくりにSX・GXの視点は欠かせません。

連載コラム「DXからSX・GXへ」では、今回の計測展で展示されるものの中から、カーボンニュートラルの実現に寄与し、新しい価値を生み出し、今後のビジネス拡大が期待される技術や製品を日経BPでセレクト、連載形式で紹介していきます。

「もっと製品のことを詳しく知りたい」「技術者、企画担当から話を聞きたい」という方は、ぜひ計測展会場にお越しください。

SX(サステナビリティトランスフォーメーション)=企業が『持続可能性』を重視し、企業の稼ぐ力(競争優位性)とESG(環境・社会・ガバナンス)の両立を図り、経営の在り方や投資家との対話の在り方を変革する取り組み。

GX(グリーントランスフォーメーション)=政府が掲げるカーボンニュートラルの実現に向けて社会システムそのものを変革する取り組み。

Key Product & Key Person 第1回

【無線温度計測システム WC-1000/WT-1000シリーズ】 小野測器

小型化×無線化で温度計測の煩わしさとエネルギーロスを解消

自動車関連の計測解析システムなどを手掛ける小野測器。新規に業界最小クラスの無線温度計測システムを製品化。計測展2022 OSAKAで実機を展示し、様々な分野の機器や空間の温度計測の需要の取り込みを狙う。

――どのような製品ですか?

弊社の中では、これまでになかったコンパクトな計測システムです。熱電対(温度センサー)をつないだ小型でスリムな温度計測モジュールを様々なポイントに置いて、温度データをワイヤレス(Bluetooth)でPCに送信。専用のソフトウエアによってリアルタイムでモニタリングし、データを収集します。

例えば、自動車内の温度の計測では、数十カ所にセンサーを設置するため、配線が煩雑なうえ、ケーブルの山ができてしまいます。ワイヤレスなので配線の手間を省け、狭いところや動いているものにも設置して計測できます。例えばシャフトのような可動部やタイヤのような回転体にも使えます。有線に比べてノイズが少ないのも特徴です。

システム構成

――他社にはなかった製品ですか?

他社でワイヤレスを使った温度センサーはありますが、ここまで小型で、しかも最大200チャンネルまで同時に温度計測ができるものは見当たりません。

もともと小野測器には温度計測のイメージがありません。弊社の得意とする音や振動と同じように温度でも計測や解析を行い、しかも無線化できればという声が内外から出ていました。無線通信技術の基礎研究の部門を中心に製品化を進めましたが、企画側から要望のあった温度範囲やチャンネル数を満足させながら小型化するのはかなり難しいものでした。

また、無線通信の場合、一時的に通信が途絶えたり、データを取りこぼしてしまったりすることはあり得ます。そこで温度計測モジュールにメモリーも搭載し、データを送信しつつ、自らもデータ保存を行い、収録の終了時には欠損のないようにPCのファイルに保存できるのも大きな特徴です。

――実際に製品をリリースして、反応はいかがでしたか?

昨年11月に製品を発表し、本格的な販売はこれからですが、自動車のバッテリーのセルや、産業用のロボットアームの稼働部周辺の発熱などの計測に使われています。また、配線をなくしたい半導体製造装置のような工作機械メーカー、室内の温度分布を計測したい空調機器メーカーなど、これまで取引のなかった分野からの引き合いが出始めています。無線温度計測の市場が広がる可能性を実感しました。

――SXやGXへの取り組みにも役立ちそうですね。

自動車などでもわかりますが、発熱はエネルギーが逃げていく大きな要因です。ロボットアーム、回転体、モーターなどほかのものでも同じ。熱の制御が省エネにつながります。省エネのためには機器の動作の効率を考え、どういうところでエネルギーをロスしているのか、失われているのかを温度計測して解析することが重要になってきています。いままで計測が難しかった部分に無線温度計測システムを使えば、エネルギーロスを減らし、カーボンニュートラルの実現に貢献できる製品ではないかと思っています。

――普及のための課題は?

まずは小野測器の無線温度計測システムというものを認知してもらうことが第一です。弊社の従来の取引先は自動車や工作機器メーカーなど限定的でしたが、計測展で実機を見てもらい、さまざまな分野の方に活用できることを知ってもらいたいと思っています。

いまの計測対象は温度ですが、今後は、様々な仕様にも対応していきたいと思っています。いろいろな所に無線計測のニーズは眠っているので、お客様の反応を見ながら、ラインナップや機能強化を図っていきます。(構成/石井 和也)

「さまざまなジャンルの温度計測に対応できます」

Key Person

山口 輝夫 yamaguchi teruo

株式会社 小野測器 商品統括ブロック MIグループ

明治大学大学院機械工学を専攻。2012年小野測器入社。「自分で考えて仕事を広げていけるのが弊社のいいところ」と山口さん。もともと技術畑のエンジニアだったが、企画やマーケティングも担当し、他社との事業の共創にも積極的だ。

会場に行けばキーマンに会える!

もっと詳しく製品のことを知りたいという方へ
10月27日14~17時に山口さんが小野測器の展示ブース(小間No.23)にいます。新しい事業開発や共創のチャンス。お声がけください。(不在や商談中の場合はご了承ください)